お店の人と相談しながら
瞳見は水着を選んでいる。
その様子をぼおっと眺めていた。
均は、はじめて女性と水着を買いに来たけれど、
それがはじめてあった女性とになるとは思ってもみなかった。
そんな状況に、心躍っていたのだが、
自分の男性的なファンタジーを
見透かされ一喝されたので、静かにしていた。
男性用の水着売り場も申し訳程度に
用意されており、
自分も水着が必要なことを思い出し、
選びはじめた。
際どいビキニタイプの
パンツを手に取りながら、
これを履くには、
腹筋がしっかり割れていないと
かっこ悪くてはけないだろうと思った。
均はあまり自分の体型について
考えたことはなかったかもしれない。
体型、スタイルが良くないと
水着が似合わないのは、
男女ともに同じである。
しかし男性が自身のスタイルについて
あれこれ言われることは確かに少ない。
また世の中の40代の男性とは
大体そんなものであり、
中年太りしている、
と思い込んでいたかもしれない。
40代で緩んでいる男性もいれば
同じように緩んでいる女性もいて当たり前だし、
引き締まっている男性も女性もいる。
千差万別であろう。
二人とも水着を選び終えて、
高雄が支払いを済ませる。
「僕の思いつきで、
急にプールに行くことになったから。
プレゼントするよ。」
「ありがとう。
それに平日だったから
すいてる中で買い物が
できてよかったわ。」
普段は人でごった返している
商業施設であり、
ショップだっとしても、
平日であれば
こんなにゆっくりしているなんて、
ただ、平日休みをとるだけで
都内の見え方も
全然違うのものになるんだなと、
均は考えていた。
時間もいい頃合いであり、
プールへ向かうことにしたが、
その前に、
他に必要なものがないかなど
プールの情報を調べようと
均は思った。
平日の空いてる買い物しかり、
事前の情報収集と、
余裕が大事なんだよね、
と高雄の声が頭の中に響いた。
ホテルのプールなので
プールだけ利用するよりも
平日ということもあり、
デイユースで部屋付きの割安な
プランもあった。
もちろん
都内のホテルの豪華なプール
は元々の値段設定は高い。
それが、平日の昼間というだけで、
随分とお得なんだな、と均は思った。
ホテル側の都合を考えれば、
部屋をただあけておいても
勿体無いのだろう。
荷物を置いたり
部屋で着替えられるし、
休むのも便利だろう。
高雄と瞳見、
夫婦にとって
豪華な平日の、
いい夏休みになりそうだなと
均は思った。
旅行先で、
豪華なホテルの部屋を
利用することはあっても、
東京近郊で暮らしていて、
都内のホテルを利用することは
ほとんどない。
すごく贅沢な感じがする。
均は一度も行ったことが
ないかもしれないと思っていた。
そして、
そもそも、誰か女性を
ホテルに誘ったことが
これまであっただろうか、
と考えていた。
さらっと提案すれば
いいのだけれど、
なかなか言い出せない。
そういうことが
これまでもたくさんあった。
断られたら
どうしよう、
と思うのである。
高雄は言う、
断られたどうなるんだ?
断られたら、誰か困るのか?
均は答える、
断られたら、
そうですね、
自分が悲しいだけですね。
相手は特に困らないですね。
高雄は続ける、
それだったら、
自分が考えてることを
伝えみることは
とりあえず、
いいんじゃないかな?
そうかもしれない、
と均は決意する。
「デイユースのプール付きプランでも
値段が変わらないみたいだから、
そっちの方が得かもしれないって。」
「そうなんだ、それで?」
瞳見が答える。
「いや、それだけだけど。」
高雄は言う、
最後の一言を相手に委ねちゃダメだよね。
均は、
そうですねと
苦笑いした。
夫婦はプールへと向かった。
編集後記
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